2025年9月17日(水)、第79回日本体力医学会大会において、日本体育・スポーツ・健康学会×日本体力医学会 ジョイントシンポジウムとして「多重環境社会におけるWell-being 実現に向けた身体圏研究」が開催されました。
本シンポジウムでは、3名の登壇者がそれぞれの研究を紹介しつつ、将来訪れるであろうサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)が融合した社会において、経済発展と社会的課題の解決を両立する新たな未来について議論しました。
座長 伊坂忠夫(立命館大学スポーツ健康科学部)
「多重環境社会におけるWell-being 実現に向けた身体圏研究」
定藤 規弘(立命館大学総合科学技術研究機構)
「身体圏研究と脳そしてウェルビーイング」
島田 裕之様(国立長寿医療研究センター)
「高齢者の多重環境化社会への適応に必要な要件」
土橋 祥平様(筑波大学体育系,科学技術振興機構さきがけ)
「多重環境が左右する心身の健康とハイパフォーマンス」
定藤先生からは「身体圏」という新たに定義された言葉の概念の説明およびSociety 5.0時代にはデジタル環境での身体性・自由・プライバシーも重要であり、身体圏研究は人類の適応を支える学際的フレームワークとして持続可能で公正な社会づくりに貢献することが期待されていると論じられました。
島田先生からは高齢者におけるデジタルデバイス利用の難しさの一方、デジタルツールやAIは心身機能の低下の支援に有効であるとの発表がありました。高齢者のデジタルデバイス利用は国や自治体、企業が解消に取り組み成果が出始めている一方、詐欺への不安などから利用を拒む人も多く、高齢者の適応には相談できる環境整備や危機管理知識の普及が必要であり、さらに親しみやすいサービスやUI/UXの開発、利活用の効果周知など包括的な取り組みが求められるとまとめられました。
土橋先生からは「フロー状態」に注目し、eスポーツを用いてその神経生理学的メカニズムを研究しており、対人戦でより深いフローが生じやすく、社会環境がハイパフォーマンス実現に重要であること、これらの知見を踏まえ、健康やパフォーマンスを通じたウェルビーイング実現の方法についてまとめられました。
シンポジウム後半では、座長の伊坂忠夫(立命館大学スポーツ健康科学部)を交えた4名による活発なディスカッションや質疑応答が行われ、将来訪れるであろうSociety 5.0時代における人間の適応や社会制度・倫理の在り方などについて議論されました。
本シンポジウムは、身体圏がどのようなものであるかの理解を深めるとともに、身体圏研究の普及に向けた貴重な機会となりました。関係者の皆様に心より御礼申し上げます。
